2011年4月13日水曜日

ある青年

 神戸からの最終電車での帰り、自宅マンションの前で一人の青年が座っていた。
 よく見ると、昔学校にいて転向した男子生徒だった。
 その回りには散らばったタバコの吸殻と洋酒のボトルがあった。大学受験にもどうにか合格したとのうわさも聞いていたので、「大学どうや?」と聞いても上の空でまともな返事が返ってこない。
「オモニは元気か?」と尋ねたら、表情が突然硬くなり、視線が険しくなった。何かあったのだとピンときたので会話を打ち切って帰宅したところ、妻が開口一番、「さっき駐車場で親子が罵り合いの喧嘩をしていて、息子がものを投げつけていたので、じぃっと見ていたら〇〇〇君やったからびっくりした」と言ってきた。 
 生後まもなく父親が行方をくらまし、母子家庭で育ってきたので「母親」は絶対的な存在で「最後の砦」だった。その母親とそこまで悪化しているとは・・・。
 彼のうつろな表情はすべてを失くしてしまったことの絶望感と虚無感だったのだろう。
 彼と母親とは直接かかわったことがあるだけに、ずしんと気が重くなり、「何で転校したんや!」と叫びたくなった。
 
 
  

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