2011年6月8日水曜日

虐待

 芥川賞作家の柳美里の500日にも及ぶNHKの記録をみた。
 自殺と家出を繰り返しながら現在は小六の男の子を持つシングルマザーであるが、自ら受けた「虐待」が子どもへと連鎖するその葛藤と苦難のドキュメンタリーである。
 幼少のころ殴られ、鼻を骨折させられた72歳になった父親との対面、「人生に悔いはないの?」と遠まわしに虐待への謝罪の言葉を期待したが、「出世できなかったことが一番の悔い」だと開き直る父に愕然とする。
 その後、父親を連れて韓国に行くのだが、そこの親戚から聞かされた父の過去、そして祖父の父や叔父に対する凄まじい虐待の事実を知ることになる。
 一方、母親からも虐待を受けていて、その母親がカウンセリングを受ける場面もあった。
 気丈夫に振舞っているが、カウンセラーの鋭い一言に言葉を失い、封印している自らの過去の記憶と体験を語ろうとするのだが、結局語らないままカウンセリングを拒否してしまう。
 たぶん父親以上の凄まじい体験をしているのであろう。
 柳美里が「完璧な母親を目指して努力していたのだが、それができなくなるとその苛立ちや悔しさが子どもへの虐待となっていった」という言葉が重い。
 「封印した記憶と体験」は人を成長させているようで、実はそうでないようだ。それを自ら解き放すことができたときに真の成長というか成熟が始まることを実感した。
 
 
 

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